「コロナでストップしていたスラムツアーを再開する予定なので、見学に来ませんか?」
とスラムを支援しているシーカー・アジア財団にお誘いいただいたとき、私は一瞬考えてしまいました。
私たちの住むスクンビット中心部にほど近い場所に、「クロントゥーイスラム」があることは知っていたけれど、そこに対する問題意識や支援の意思を、常に持っていた訳ではない私が、気軽に見学に行っていい場所なんだろうか?と。
もちろん財団の方は「大丈夫」と言ってくれるけれど。
でも、行ってみたいか行ってみたくないかで言うと、行ってみたい。行って、自分の目で見て、どんなところなのか知りたい。
そんな訳で、この記事では、クロントゥーイスラムについて、そして彼らの生活をサポートしているシーカー・アジア財団について記していきたいと思います。
クロントゥーイスラムとシーカー・アジア財団
クロントゥーイスラムは、バンコクにあるタイ国内最大規模のスラム地域のことを指します。
正確な統計データは取れませんが、人口は推定10万人。(ちなみにバンコクには2,000を超えるスラムが存在し、人口は約210万人と推測されています。)
元々は地方からバンコクに仕事を求めて来た港湾労働者のコミュニティとして始まりました。
現在では、物流拠点が他の港に移ったため、港湾労働者が減少。建設現場やタクシー運転手として働いている方が多いようです。
話は変わりますが、東日本大震災のときに世界各国から送ってもらった義援金。タイが世界で3番目に多く寄付をしてくれた国だということは、あまり知られていない事実。
そして、このクロントゥーイスラムからも、そもそもの日々の生活自体が大変な中で、100万円を超える義援金を集めて寄付してくれたのです。
その背景には、2004年にタイ南部を津波が襲ったときに日本から支援があったことや、日本からのスラムへの支援も長年にわたり続いていることあったと聞きました。
そんなクロントゥーイスラムへ長く支援を続けている団体のひとつが、シーカー・アジア財団です。
シーカー・アジア財団は、クロントゥーイスラムの人々を教育からサポートするため、1991年に設立されました。
「シーカー」はサンスクリット語で「教育」という意味で、タイの子どもたちへの教育支援を活動の軸にしています。
シーカーの主な活動は以下の6つ。
- コミュニティ図書館事業
- 移動図書館事業
- 奨学金(バンコク・ターク県・パヤオ県)
- 学生寮(パヤオ県)
- 保育園(スワンプル)
- クラフト商品製造販売(山岳民族の商品・FEEMUE)
クラフト商品製造販売事業の主ブランドであるFEEMUE。
地域が持たれるネガティブなイメージを、デザインの力で変えることを目標とし、スタイリッシュなデザインのバッグやポーチ、アクセサリーなどを販売しています。
商品は、財団内にある縫製所で女性たちがひとつひとつ手作業で製作しています。
https://www.bangkok-pukuko.com/entry/feemue
コミュニティ図書館と移動図書館
そして、シーカーの主事業であるコミュニティ図書館事業。
本や各種メディアに触れる機会の少ない子どもたちが、気軽に本に触れ合える場所を得られるために作られたのがコミュニティ図書館です。
単純に知識を得るという目的だけでなく、読み聞かせや紙芝居、人形劇などのレクリエーションを通して、コミュニケーションの場にもなるようにという願いが込められています。
ちなみにこの図書館。東日本大震災のときに、スラムの住人たちが義援金を送ってきてくれたことに感動した杉澤廣行氏が、「10倍の恩返しがしたい」ということで1,000万円超を寄付し、全面改修したという逸話があります。
改修時のテーマは「未来の図書館」
館内には、おもちゃで遊ぶスペースや、大人のための読書スペースも設けています。
図書館内には、日本人に愛着の深い有名絵本もちらほら。
これらの絵本は、ボランティアの手によりタイ語翻訳のシールが貼られています。
こうやって日本の絵本がタイの子どもたちにも親しまれているというのは、嬉しくなりますね。
また、こういう活動のおかげで、ここに住む子どもたちは日本に対して良いイメージを持ってくれていると聞きました。
2021年3月には、東日本大震災から10年を迎えるのを受けて、復興応援イベントを開かれたそう。
そのイベントのためにスラムの住人と子どもたちが折ってくれた千羽鶴が図書館に飾られているのを見て、胸が熱くなりました。
子どもたちのための読み聞かせや紙芝居などのレクリエーションも定期的に開催されています。人形劇を少し見せていただきましたが、演者のおばちゃんの演技力が凄かったです笑
楽しいのは大前提ですが、例えば手洗いの歌とダンスで新型コロナウイルス感染症の予防方法を教えたり、啓蒙活動の場としての役割も担っています。
移動図書館も行っており、主にターク県やサムットサコーン県、スラム地区で活動されています。
絵本に触れる機会の少ない少数民族や移民労働者の子どもたちは、図書館が来るのをとても楽しみにしてくれているそう。
クロントゥーイスラムを見学
実際にクロントゥーイの街の中も歩かせてもらいました。
スラムというと、薄暗くて、汚くて…っていうイメージを持たれがち。私もそんな想像をしていましたが、そういう場所って一部だったりします。
舗装された道だってあるし、売店もあります。
少し大きな通りに出ると、ここがスラム街と呼ばれているなんて、誰も想像できないと思いませんか?
金銭的に余裕はあるけれど、ここが生まれ育った街だからとこの土地に根付いている人もいるそう。
これから新しく建築する建物もあります。意外なことに、家造りを担うのは軍人さんなんだとか。
確かに軍人さんが集まって家の基礎を作っています。
港湾も近く、雨水の溜まりやすい土地での家造りっていうのは、ちょっと心配になるけれど。地震のない国だからなんとかなっているんでしょう。
道を歩いていると、ワニが祀られている祭壇を発見。運河の神様なんだそう。
また、同じクロントゥーイスラム内といえど、様々な地区に分かれていて、地域活性化のための活動を行っているエリアもあります。
例えばここ。ゴミと緑を交換するという活動が過去に行われ、成功したエリアです。
確かにここの道は、緑のカーテンのようになっていて空気が気持ちよく、ゴミも落ちていません。そのせいか周辺が明るく感じました。
あ!ニワトリ発見!と思ったら、闘鶏用の軍鶏(シャモ)なんだそう。恐竜のような足が特徴的。
そういえばタイは闘鶏の本場なんでしたね。
猫もたくさん見かけました。気持ちよさそうに寝ています。
スラムを歩いてみて思ったことは、「みんな明るい!」ということ。
もちろんちょっと街を歩いただけで理解できるとは思わないけれど、想像上だけの「知らない人たちの貧しい暮らし」ではなく、「生活や人との関わりを楽しんでいる、私たちと何ら変わらない人たちの暮らし」が自分の中でイメージできたことは、大きな収穫でした。
だからこそ、そこで暮らす子どもたちの未来が、少しでも明るいものになればいいなと願ってやみません。
そのために何か自分にできることはないか、と自然と考えるようになりました。
クロントゥーイスラムツアーが再開
コロナ渦の影響で近年ストップしていた「クロントゥーイスラム・スタディツアー」を2021年5月から不定期で開催予定。
→コロナ第3波の影響で開催延期になる可能性あり(2021.4.8現在)
クロントゥーイの歴史を知り、街並みを見て回る他、FEEMUEの縫製所やショールームも見学できます。お土産も有り。
冒頭にも少し述べましたが、崇高なボランティア精神などは特段必要ありません。
私たちの住むタイで、どんなことが問題になっていて、どんな人が困っているのか。まずは知ることが大切。知ることから全てが始まると思います。
開催日程は、各種SNSでお知らせされるとのこと。
興味がある、という方は是非問い合わせしてみてください。
シーカー・アジア財団 団体概要
住所 | 1596 Rama IV Rd, Khlong Toei, Bangkok 10110 |
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電話 | 02-249-7567 |
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